安部・船木研究室

惑星間航行技術

惑星間を飛行する宇宙機の推進システムに関して、将来型の推進システムの提案から、
現在使われている推進システムの評価検討まで様々な研究を進めています。


<磁気プラズマセイル>

惑星間を航行するための新しい推進システムとして、プラズマセイルと呼ばれるものがあります。
これは、太陽から放出される超音速プラズマ流(太陽風)を探査機から展開した磁場で受け止めて推進するシステムです。
このシステムは磁場で太陽風を受けて推進しますが、太陽風密度は非常に希薄なため、数km〜数十km単位の磁場半径を必要とします。そのような広大な磁場を生み出すには、それに対応する巨大な超電導コイルが必要となりますが、その案は設計性、運用性、また経済的観点から不可能であることは容易に想像できます。ここで、考えられたのが探査機からのプラズマ噴射による磁場展開という案です。 当研究室ではこの磁気プラズマセイルの実用化を目指し、スケールモデル実験や数値解析によって推進原理の実証からシステム検討まで幅広く研究を行っています。



Fig1. 磁気プラズマセイルのイメージ図

 

スケールモデル実験では宇宙科学研究本部内にある直径2.5m、長さ5mの真空槽に磁気プラズマセイルシミュレーターを開発・設置し、プラズマ噴射によって拡大した磁場に模擬太陽風を吹くことで宇宙空間での磁気プラズマセイルを実験室スケールで実現しています。



磁場のみで太陽風を受け止めている様子


プラズマ噴射によって拡大した磁場で太陽風を受け止めている様子

Fig. 2 磁気プラズマセイルスケールモデル実験




Fig.3 磁気プラズマセイルの計算例


<MPDスラスタ>

放電などにより推進剤を高温のプラズマ状態にし、ノズルから噴射して推力を得る宇宙用ロケットのことを電気推進ロケットと言います。
電気推進は化学推進と比べ燃費がいいことが特長なのですが、化学推進と比べ推力が小さいという欠点があります。そこでより高い推力密度(N/m2)を得ることが望まれています。 当研究室では電気推進ロケットの中でも高い推力を発揮できるMPDスラスタ(MagnetoPlasmaDynamic Thruster)に着目し、 スラスタ内部のプラズマ流を数値解析することで現象の理解・推進効率の向上を目指しています。

MPDスラスタは、円筒・同心同軸形状の電極を持ち、中心側に陰極、その外周を陽極が覆っています。電極間で放電を起こすと、流入させた推進剤がプラズマ化とするのと同時に、周方向に自己誘起磁場が生じます。この放電電流と自己誘起磁場によって発生するローレンツ力によりプラズマ化された推進剤を加速・噴射します。特に、自己誘起磁場のみを加速に用いるMPDスラスタをSelf-field MPDスラスタと呼びます。


    
      Fig.4 Self-field MPDスラスタ     Fig.5 Self-field MPDスラスタの計算例  
                      (電気伝導度分布と放電電流経路)


Self-field MPDスラスタは大電力(100kW-MW)を必要とします。しかし、現在の電源技術では宇宙機が利用できる電力は数kWから数十kW程度までが限界なので、そのような電力レベルでも効率よく動作するMPDスラスタの開発も望まれています。そこで外部から磁場をMPDスラスタに印加することで低い電力レベル(低い放電電流)でも効率よく動作することが考案されています(Applied-field MPDスラスタ)。Applied-field MPDスラスタによるプラズマ加速機構に関する数値的研究も行っています。



    
Fig. 6 Applied-field MPDスラスタ     Fig.7 Applied-field MPDスラスタの計算例
               (印加磁場と流速分布[km/s])


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